【プロ野球小ネタ】過去5年のドラフトを“即効度”で評価してみる(2013~2017年)
はい、というわけでだう。ですけれども。
年に一度、国内アマ選手の交渉権をかけて開かれるドラフト会議。
毎年、会議前には指名予想が雑誌や新聞紙面をにぎわせるのが風物詩に。会議後にも評論家たちによる“採点”が行われたり、ファンたちが議論を交わしたり……と話が尽きることはありません。
そんな中、ドラフト会議の内容を評価するときに「ドラフト会議は5年後に評価するもの」というワードがあります。多くの選手は、将来的な戦力となることを期待されてチームの指名を受けます。選手が一人前の戦力として成長するのに要する期間が大体3~5年、というわけでこの言葉が使われています。
が、しかし!!
中には即戦力となることを期待されて指名した選手もいるでしょう!
何なら、チームとして即戦力となりそうな選手を中心に指名しようとした年だってあるはず!
そういうドラフトは、今すぐにでも評価できるのではないか!!??
ということで、今回は2013~2017年のドラフト会議を、即効度で採点・評価してみたいと思います。
1.採点方法
今回は、指名された選手の1年目の成績を、8段階(S、S-、A、A-、B、C、D、E)でランク分けしました。
評価基準は上の表のとおり。
チーム貢献度は測りかねるので、今回はあくまでも個人成績のみで見ました。
ランクごとに決めた点数をチームごとに合算、入団した選手の人数で平均値を取り、その値を評価点としています。
2.2017年度
2017年度のドラフト会議では、清宮幸太郎(早稲田実業―日本ハム)や中村奨成(広陵―広島)ら高校生が話題の中心に。実際の会議では清宮が7球団、中村が2球団の指名を受けたほか、“外れ一位”指名においても安田尚憲(履正社―ロッテ)と村上宗隆(九州学院―ヤクルト)がそれぞれ3球団の指名を受けました。
即効度で見たチームの順位と平均値は以下の通り。
①DeNA 1.18pt
②ロッテ 0.97pt
③中日 0.72pt
④オリックス 0.67pt
⑤阪神 0.46pt
⑥ヤクルト 0.41pt
⑦日本ハム 0.32pt
⑧西武 0.25pt
⑨楽天 0.23pt
⑨巨人 0.23pt
⑪ソフトバンク 0.20pt
⑫広島 0pt
この年は大学生選手もいわゆる“素材型”の選手が多く、即戦力として目覚ましい活躍したのはセ新人王の東克樹(立命館大―DeNA)、一時はクローザーを務めるなど53試合に投げた鈴木博志(ヤマハ―中日)、ショートのレギュラーを射止め全試合に出場した藤岡裕大(トヨタ自動車―ロッテ)の3人。いずれも今回のチーム順位を押し上げる原動力になっています。
そのほか、86試合に出場し準レギュラー級の活躍をした神里和毅(日本生命―DeNA)がポイントを大きく伸ばす力となりました。
一方で、ダントツの最下位になってしまった広島は大卒のケムナブラッド誠(日本文理大―広島)、平岡敬人(中部学院大―広島)を含め、指名した全選手が18年の一軍出場なし。当時もドラフト評論家の小関順二氏に「将来性志向に舵を切った」という評価をされており、それがそのまま点数にも表れたと言ってよいでしょう。
3.2016年度
この年は最速156キロ右腕・田中正義(創価大―ソフトバンク)や佐々木千隼(桜美林大―ロッテ)ら大学生投手を中心に、高卒選手にも今井達也(作新学院―西武)、藤平尚真(横浜―楽天)、寺島成輝(履正社―ヤクルト)ら好投手が出揃い、「豊作のドラフト」と謳われました。チームの指名も即戦力志向や将来性志向など色の差がはっきりと出ました。
①西武 1.88pt
②中日 1.43pt
③ロッテ 1.33pt
④オリックス 1.09pt
⑤DeNA 0.83pt
⑥阪神 0.69pt
⑦日本ハム 0.63pt
⑧楽天 0.61pt
⑨ヤクルト 0.57pt
⑩巨人 0.47pt
⑪広島 0.21pt
⑫ソフトバンク 0pt
この年は投手豊作のドラフトでしたが、結果としては源田壮亮(トヨタ自動車―西武)と京田陽太(日本大―中日)と、野手が新人王を獲得した珍しい一年となりました。彼らを擁する2チームが当然ランキングでも上位に跳ね上がってきましたが、1位と2位の差を決めたのは投手でした。
この年の中日は、東京六大学で通算300奪三振を記録した柳裕也(明治大―中日)、大学日本代表候補にも名を連ねていた笠原祥太郎(新潟医療福祉大―中日)、首都大学野球連盟リーグで完全試合を達成した丸山泰資(東海大―中日)と3人の大学生投手を指名。中でも柳は即戦力候補としての期待も高かったのですが、プロ1年目は1勝止まりでした。
一方の西武は1位に今井、2位に速球派の中塚駿太(白鷗大―西武)と将来性志向の指名。下位でも高卒野手の鈴木将平(静岡―西武)、故障持ちの田村伊知郎(立教大―西武)と将来性を買った指名が目立ちました。その中で即戦力候補として指名されたのが3位の源田と、5位の平井克典(Honda鈴鹿―西武)。源田はチームの課題であった正遊撃手の座を射止め、平井は42試合に登板しリリーフ陣の柱に。突出した二人の成績がチーム全体のポイントを押し上げ、同時に中日との明確な差となりました。
最下位のソフトバンクは、唯一の大学生選手として指名した大物・田中正義がケガのために一軍出場なし。ほかの指名選手はすべて高卒でじっくり育成する方針であるため、獲得ポイントなしという結果になりました。
4.2015年度
この年は高橋純平(岐阜商―ソフトバンク)やオコエ瑠偉(関東一高―楽天)、平沢大河(仙台育英―ロッテ)らスター性のある高校生が大きな注目を浴びるなど、全体的にも高校生が指名の中心となりました。しかし、一人の選手が3球団以上の指名を受けたのは高橋のみで、穏やかなドラフトだったという印象です。
①阪神 1.96pt
②楽天 0.92pt
③日本ハム 0.91pt
④DeNA 0.85pt
⑤広島 0.82pt
⑥ロッテ 0.64pt
⑦西武 0.58pt
⑦ヤクルト 0.58pt
⑨オリックス 0.54pt
⑩中日 0.50pt
⑪巨人 0.14pt
⑫ソフトバンク 0pt
この年、阪神が突出したのは新人王の高山俊(明治大―阪神)によるものでした。そしてもう一人、主に後半戦で先発ローテの一角を担った青柳晃洋(帝京大―阪神)の活躍も大きく、二人でポイントを稼ぎました。
2位の楽天はショートのレギュラーを勝ち取った茂木栄五郎(早稲田大―楽天)と、サブ捕手として存在感を見せた足立祐一(パナソニック―楽天)がチームのポイントを牽引。3位の日本ハムは高卒社会人の加藤貴之(かずさマジック―日本ハム)と井口和朋(東農大北海道オホーツクー日本ハム)がそれぞれ30試合以上に登板し投手陣を支える活躍をしました。
最下位のソフトバンクが将来性に割り切った指名であると見て取れる一方で、最も中途半端な感があるのが巨人。鳴り物入りで1位指名を受けた桜井俊貴(立命館大―巨人)はシーズン序盤にケガでリタイア、重信慎之介(早稲田大―巨人)や山本泰寛(慶応義塾大―巨人)ら東京六大学で活躍した選手らも一軍に割って入るほどの活躍は見せられず、低調に終わってしまったのがポイントにも表れてしまいました。
5.2014年
この年は京大出身の田中英祐(京都大―ロッテ)がマスコミの話題となった一方で、高校生の注目選手は故障持ちが多く、話題性はもう一つ。4球団の指名を受けた有原航平(早稲田大―日本ハム)も4年の秋季リーグで一時離脱しており、チームとしての眼力が試されるドラフトとなりました。
①DeNA 1.59pt
②巨人 1.09pt
③日本ハム 0.56pt
④ロッテ 0.46pt
⑤楽天 0.44pt
⑥オリックス 0.42pt
⑦阪神 0.35pt
⑧広島 0.31pt
⑨西武 0.29pt
⑩中日 0.25pt
⑪ヤクルト 0.06pt
⑫ソフトバンク 0.03pt
この年はDeNAの一人勝ち。当時の監督であった中畑清氏の好判断もありますが、山﨑康晃(亜細亜大―DeNA)がクローザーにハマり、新人最多セーブ記録を樹立する圧倒的な活躍ぶりを見せました。2位の石田健大(法政大―DeNA)や3位の倉本寿彦(日本新薬―DeNA)も準レギュラー級の数字を残し、ポイントを稼いでいます。
2位に滑り込んだ巨人は、ルーキーながら規定投球回をクリアし9勝を挙げた高木勇人(三菱重工名古屋―巨人)とリリーフ左腕の戸根千明(日本大―巨人)の活躍がポイントを稼ぐ結果に。3位以降は突出度に欠け、ポイントを稼げませんでした。
また、失敗ドラフトとしてよく語られがちなのが、この年の中日とヤクルト。中日は本指名で9人の選手を獲得していますが、全員が大卒以上という即戦力志向に振り切った指名。4位の石川駿(JX-ENEOS―中日)以外は皆一軍デビューを果たしているのですが期待に見合った数字が残せず、野手は6~8月に一軍でスタメンを張った遠藤一星(東京ガス―中日)、投手では9位指名の金子丈(大阪商業大―中日)が中継ぎで10試合登板したのがそれぞれ最高という寂しい結果に。ヤクルトもまた、3位指名の山川晃司(福岡工大城東―ヤクルト)以外の6人を大卒~社会人で占めるという指名を行いましたが、一軍に出場したのは2位の風張蓮(東農大北海道オホーツク―ヤクルト)と4位の寺田哲也(香川オリーブガイナーズ―ヤクルト)だけ。しかもどちらも1試合のみの登板という、期待にそぐわない結果でした。
6.2013年
この年は2012年の大阪桐蔭の春夏連覇を支えた森友哉(大阪桐蔭―西武)や、同じく2012年に切れ味鋭いスライダーで1試合22奪三振の記録を作った松井裕樹(桐光学園―楽天)ら早くから注目を受けていた高校生選手が話題の中心に。また、又吉克樹(香川オリーブガイナーズ―中日)は独立リーグから初の上位指名ということで話題になりました。
①広島 2.80pt
②ロッテ 1.43pt
③中日 1.34pt
④ヤクルト 1.21pt
⑤楽天 0.97pt
⑤DeNA 0.97pt
⑦阪神 0.83pt
⑧日本ハム 0.78pt
⑨西武 0.75pt
⑩オリックス 0.69pt
⑪ソフトバンク 0.63pt
⑫巨人 0.09pt
この年は即戦力に照準を絞った広島が一人勝ち。九州共立大で1年次から主戦投手として投げていた大瀬良大地(九州共立大―広島)が期待に応える活躍ぶりで新人王を獲得すれば、2位指名の九里亜蓮(亜細亜大―広島)も主に先発で20試合に登板、3位の田中広輔(JR東日本―広島)は三塁→遊撃へと移り110試合に出場し、たちまちチームの主戦力に成長しました。
2位のロッテも実は大社中心の即戦力候補に絞った指名。2位以降の選手が成績としては燻ぶった感があるものの、1位指名の石川歩(東京ガス―ロッテ)が新人王を獲る活躍を見せただけで十分成功と言える内容です。
少しの差で3位にとどまった中日ですが、こちらは又吉と祖父江大輔(トヨタ自動車―中日)が中継ぎの主力に加わる鉄腕ぶりを発揮し、ポイントを稼ぎました。
ここでも微妙なポイントで下位に落ち込んだのが巨人。1位の小林誠司(日本生命―巨人)を除けば皆高校生なので仕方がないことではありますが、ほかの11球団にはA-以上の評価となった選手が1人以上いるのに対し、巨人は小林のC評価がチーム最高点にして唯一のポイント獲得者。ちぐはぐ感があるのは否めません。
7.終わりに
ドラフト会議を敢えて“即効度”で見てみる、という試みは個人的に興味深く、結果としても面白いものが得られました。やってよかったなーと思います。
ただ、指名選手全員の一軍出場成績を調べるというのがなかなか手間がかかりまして……5年分調べるだけでも苦労しました。
もうしんどいと感じている半面、即戦力候補を指名する意識が強かった8~90年代はどんな結果になるんだろうという興味もあったりして……。
今後、気が向けば、過去の年代でも調べてみたいっすねー。気が向けば、ね……。