日本球界を代表する名ショートといえば松井稼頭央の名を挙げる人は少なくないだろう。2023年から指揮を執った西武ライオンズでは2024年5月に休養となってしまったが、まだ指導者としても若いこともあり、何らかの形で球界に戻ってきてほしいと願うばかりだ。
今回はそんな松井と同世代である1975年4月~1976年3月生まれの選手でチームを組んでみる。(文中敬称略)(2017.12.07 初出、2024.7.28、2025.8.10 加筆修正)
1975世代って誰がいるの?
この世代の特徴と言えば、松井をはじめ上原浩治、高橋尚成、川上憲伸、大家友和、マック鈴木、建山義紀と、メジャーリーグへ挑戦した選手が多いのが特徴だ。一方で国内組でも高橋由伸、福浦和也と“チームの顔”であった選手が名を連ねている。
この世代で最も遅いプロ入りとなったのが三瀬幸司(元ダイエー・中日)。2003年のドラフト会議で7巡目指名を受け、共に指名を受けた竹岡和宏と合わせてオールドルーキーと呼ばれた。新人ながらクローザーに抜擢されると安定した投球を見せ、オールスター出場、新人王(パリーグ最年長記録)、最優秀救援投手、更には城島健司と共に最優秀バッテリー賞に輝くなど、目覚ましい活躍を遂げた。
統計で見る1975世代
この世代は73人の選手がプロ入り。世代別で見れば少ない方だ。
しかし、1位指名を受けてプロ入りした選手の割合は先に取り上げた1974世代よりも高い。以下は指名順位別の内訳だ。
1位:11人
2位:9人
3位:13人
4位:10人
5位:14人
6位:8人
7位:6人
8位:2人
特に巨人は上原、高橋尚、高橋由の3人を、97〜99年にかけて指名しており、3年連続で1975世代の選手を1位で獲得している。
プロ入り前の最終キャリアで分けると以下の通り。
高卒:31人
大卒:22人
社会人:30人
球団別で見てみると、ロッテが10人で最多。次いで巨人、中日、オリックス、日本ハムが8人を指名している。特に巨人は高橋尚成、高橋由伸、上原浩治と、この世代の選手を1位で3人指名している。逆に最も少ないのは横浜の1人だった。球団別の内訳は以下の通り。
10人:ロッテ
8人:巨人、中日、オリックス、日本ハム
7人:阪神
6人:広島、ダイエー、近鉄
3人:ヤクルト
2人:西武
1人:横浜
1975世代の歩み:高校編
1975世代が高校3年生になった1993年、最も注目されていたのは春夏連続で甲子園出場を果たした宇和島東高校のエース・平井正史。優勝にこそ手は届かなかったものの、150キロに迫る快速球で将来のさらなる活躍を予感させた。ちなみにこの年の甲子園覇者は春が上宮高校、夏は大村直之が8番を着けていた育英高校だった。
この年のドラフト会議は逆指名制度のスタートにより、1位指名は大学生・社会人に集中。高校生で1位指名を受けたのは前述の平井に加え、豊田大谷高校の平田洋(中日)、岡山南高校の山根雅仁(広島)の3人だった。2位以下には前述の大村、岡島秀樹、平尾博司、福地和広(寿樹)、大家友和、松井和夫(稼頭央)、小野晋吾、大塚明、福浦和也、吉武真太郎、金子誠らがいる。
【1位】
山根雅仁(岡山南):広島
平田洋(豊田大谷):中日→近鉄
平井正史(宇和島東):オリックス→中日→オリックス
【2位】
平尾博司(大宮東):阪神→西武
立川隆史(拓大紅陵):ロッテ→阪神→誠泰(台湾)
【3位】
岡島秀樹(東山):巨人→日本ハム→レッドソックス→ソフトバンク→アスレチックス→ソフトバンク→DeNA
高波文一(熊本工):阪神→西武→楽天→オリックス
玉木朋孝(修徳):広島→オリックス
笹山洋一(小林西):中日
大家友和(京都成章):横浜→レッドソックス→エクスポズ→ブルワーズ→ブルージェイズ→インディアンス→横浜→BC富山→米独立→BC富山→BC福島→米独立
松井和夫(PL学園):西武→メッツ→ロッキーズ→アストロズ→楽天→西武
大塚明(別府羽室台):ロッテ
斉藤秀光(横浜商大高):オリックス→阪神→オリックス→楽天→ソフトバンク→横浜
金子誠(常総学院):日本ハム
大村直之(育英):近鉄→ソフトバンク→オリックス
【4位】
大畑裕勝(柳川):巨人
中里鉄也(葛生):阪神
福地和広(杵島商):広島→西武→ヤクルト
吉武真太郎(国東):ダイエー→巨人
福留宏紀(享栄):オリックス
【5位】
佐藤誠(駒大岩見沢):巨人→ダイエー
井上貴朗(佐倉):阪神→ロッテ
田中由基(大商学園):広島
工藤友也(湖北):中日
小橋正佳(尼崎):ヤクルト
澤田剛(函館大有斗):ダイエー
中山光久(所沢商):日本ハム
【6位】
品田寛介(花咲徳栄):広島
宇佐美康広(稚内大谷):ヤクルト
小野晋吾(御殿場西):ロッテ
1975世代の歩み:大学編
1997年、東京六大学ではスター級の存在感を放つ慶応大の高橋由伸、明治大のエース・川上憲伸、法政大のエース・真木将樹の3人の去就が注目された。高橋と川上は逆指名制度を使ってそれぞれ巨人と中日へ、真木は近鉄の1位指名を受けて入団した。彼ら以外の1位指名選手では専修大の安藤正則が西武、近畿大の清水章夫が日本ハムの指名を受けた。ちなみに5人のうち高橋、川上、清水の3人はこの年の日米大学野球に代表選手入りしていた。
2位以下では倉義和、井端弘和、鈴木郁洋、前田浩継、古城茂幸、高須洋介らがいる。
また、アリゾナ・ウエスタン短期大の林田堅吾は同世代の大卒選手よりも1年早い1996年に日本ハムの8位指名を受けてプロ入り。いっぽうで上原浩治は1年間の浪人期間を経て大阪体育大に入学しているため、1年遅れの1998年のドラフト会議で指名された。
【1位】
高橋由伸(桐蔭学園→慶応義塾大):巨人
川上憲伸(徳島商→明治大):中日→ブレーブス→中日
安藤正則(専大松戸→専修大):西武
清水章夫(大阪→近畿大):日本ハム→オリックス
真木将樹(東筑紫学園→法政大):近鉄→巨人→米独立
上原浩治(東海大仰星→大阪体育大):巨人→オリオールズ→レンジャーズ→レッドソックス→カブス→巨人 ※1998年ドラフト会議で指名を受けてプロ入り
【3位】
橋本大祐(初芝橋本→富士大):阪神
木村茂(千葉商大付→千葉商科大):ダイエー
前田浩継(東福岡→九州共立大):オリックス→ヤクルト→ロッテ
【4位】
鈴木郁洋(仙台育英→東北福祉大):中日→近鉄→オリックス
礒恒之(黒羽→城西大):ロッテ
【5位】
山岡洋之(伊丹北→東北福祉大):阪神
倉義和(京都成章→京都産業大):広島
井端弘和(堀越→亜細亜大):中日→巨人
於保浩己(佐賀商→九州共立大):ロッテ
古城茂幸(中央学院高→国士舘大):日本ハム→巨人
【7位】
白坂勝史(横浜→関東学院大):中日→米独立
白鳥正樹(埼玉工大深谷→城西大):ロッテ
【8位】
林田堅吾(島原工→アリゾナ・ウエスタン短大):日本ハム ※1996年ドラフト会議で指名を受けプロ入り
1975世代の歩み:社会人編
1996年に学生ではない選手としてドラフト会議で指名を受けたのは2人。その中にはMLBでも活躍した岩村明憲の実兄で、宇和島東高校では平井正史のチームメイトだった岩村敬士がいた。また、1997年に高卒社会人4年目の永井智浩が逆指名でダイエーに入団している。
1996年ドラフト指名
【6位】
村上真哉(田村→ヨークベニマル):日本ハム
岩村敬士(宇和島東→日本体育大中退):近鉄
1997年ドラフト指名
【1位】
永井智浩(明石→JR東海):ダイエー
【2位】
前田和之(大同→日本通運名古屋):オリックス→横浜→西武
1998年には東海大仰星高校で上原とチームメイトだった建山義紀が日本ハムの2位指名を受けてプロ入りした。続いて1999年に高橋尚成と清水直行が、2000年には中村隼人や伊達昌司ら、2001年には早川大輔、2002年には下山真二やMLBからの“逆輸入選手”として話題になったマック鈴木(鈴木誠)がプロ入りしている。そして2003年、三瀬幸司が異例の28歳でプロ入り、この世代最後のプロ選手となった。
1998年ドラフト指名
【2位】
建山義紀(東海大仰星→甲賀総合科学専門学校→松下電器):日本ハム→レンジャーズ→阪神
【4位】
面出哲志(崇徳→阿部企業→三菱重工三原):近鉄→阪神
【5位】
小島大作(西日本短大付→新日鐵八幡):ロッテ
【6位】
玉峰伸典(早鞆→大竹総合専門→王子米子→王子春日井):巨人→近鉄
1999年ドラフト指名
【1位】
高橋尚成(修徳→駒澤大→東芝):巨人→メッツ→エンゼルス→パイレーツ→カブス→DeNA)
【2位】
清水直行(報徳学園→日本大→東芝府中→東芝):ロッテ→DeNA
広田庄司(海星→立正大→日本通運):ダイエー
【7位】
宮崎一彰(明徳義塾→法政大→いすゞ自動車→米独立):巨人→西武→四国IL・高知
2000年ドラフト指名
【2位】
伊達昌司(法大二→法政大→プリンスホテル):阪神→日本ハム→巨人
【4位】
中村隼人(長崎日大→創価大→本田技研):日本ハム→巨人→兄弟(台湾)
【6位】
高見澤考史(前橋工→東京ガス):オリックス
2001年ドラフト指名
【4位】
田中充(浦和学院→東洋大→NTT関東):ロッテ→ヤクルト
【5位】
早川大輔(船橋→立正大→ホンダ):オリックス→ロッテ→横浜
【6位】
萩原多賀彦(伊東城ケ崎→専修大→JR東日本):ヤクルト
2002年ドラフト指名
【2位】
鈴木誠(滝川二):マリナーズ→ロイヤルズ→ロッキーズ→ブルワーズ→ロイヤルズ→オリックス
【8位】
下山真二(社→立命館大→日本生命):近鉄→オリックス
2003年ドラフト指名
【11位】
三瀬幸司(観音寺一→岡山理科大→NTT西日本中国):ダイエー→中日
選手ピックアップ、からのベストオーダー
今回も一軍登録の上限にならい、28人をピックアップしてみる。
【投手】
○先発候補○
高橋尚成、川上憲伸、大家友和、小野晋吾、清水直行
○リリーフ○
岡島秀樹、伊達昌司、吉武真太郎、三瀬幸司、平井正史、佐藤誠、建山義紀
○クローザー○
上原浩治
【捕手】
倉義和、鈴木郁洋
【内野手】
平尾博司、井端弘和、松井稼頭央、福浦和也、金子誠、古城茂幸、高須洋介
【外野手】
高橋由伸、福地寿樹、大塚明、早川大輔、下山真二、大村直之
【ベストオーダー】
1(左)大村
2(三)井端
3(遊)松井
4(右)高橋由
5(一)福浦
6(指)高須
7(二)金子
8(捕)鈴木
9(中)福地
(先発)川上
(中継ぎ)岡島
(抑え)上原
一発長打はクリーンアップ頼みだが、井端弘和や高須洋介、金子誠、大村直之のような巧打者が多く揃い、切れ目のない打線が期待できる布陣に。投手陣は全員元メジャーリーガーという豪華布陣だ。