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【プロ野球小ネタ】歴代のサイクル安打を調べてみた

 こんにちは、私です。
 昨日(2021年9月18日)、ヤクルトの塩見泰隆選手が対巨人戦でサイクル安打を達成しました。今季の達成者は8月25日の牧秀悟選手(DeNAに続く2人目で、プロ野球史においては76度目の記録。右安→右3→右本→右2と4打席での達成は、2016年7月30日の福留孝介選手(阪神が対中日戦で達成して以来でした。

 一夜明けた本日、日刊スポーツでこんな記事が上がっていました。

www.nikkansports.com

 

 記事に添付された一覧表では達成年月日・球場・対戦相手のみの簡易な内容で、記事本文で触れていたチームの勝敗は分からず。しかしサイクル安打がなぜかチームの白星につながらない」という事象はなかなか興味深いものがあります。というわけで、今回は歴代のサイクル安打とその時の試合結果について調べてみました。

1.サイクル安打達成者がいても勝てない時がある? 勝敗との関係は

 昨日のヤクルト-巨人戦は、4回に塩見選手の3ランHRが飛び出すなど一時はヤクルトが4点差をつけていましたが、試合の中盤から後半にかけて巨人が反撃を重ね、7回裏に坂本勇人選手(巨人)のタイムリー2ベースで同点とするとその後は互いに譲らず、6-6の引分に終わりました。

 サイクル安打達成者の出た試合が引分で終了となったのは今回で3度目。前回は2003年5月3日のオリックス-西武戦、オーティズ選手(オリックス)が達成した時でした。この時の試合はなんと12-12の超乱打戦。オリックスが3回に一挙7得点のビッグイニングで大差をつけるも、西武も6回に8得点のビッグイニング返しなどで得点を重ね9回裏には同点に。延長に入ってからは両者ともに得点できずに終戦という結果でした。

 では全体の勝敗はどうなっているかというと、2021年9月18日現在で64勝9敗3引分のとなっており、サイクル安打達成者を輩出したチームの勝率は.877となりました。サイクル安打達成者が出たチームはその勢いに乗じて勝利を掴む確率が高い、と言えるでしょう。

 一方で9敗のうち、5試合は対巨人戦で記録。相手チームの選手にサイクル安打を許した時の巨人の勝率は.833という、データも出ています。

ちなみに

 1968年5月28日の南海-西鉄戦は2-1のロースコアで南海の勝利。西鉄はこの日6番に入った和田博実選手サイクル安打を記録してひとり気を吐くものの、得点は彼のソロホームランによる1点のみ。彼の前後を打つ4番・広野功選手、5番・高木喬選手、7番・基満男選手がノーヒット・3者合計5三振に抑え込まれ、勝利を逃しています。

 この試合が、サイクル安打達成者が出た全76試合の中で最も両チームの総得点が低かった試合。いくらサイクル安打が生まれてもその他の選手を封じられれば試合には勝てない、そんなことを物語る試合でした。

2.サイクル安打とチームの高得点現象

 今回、サイクル安打が達成された試合の結果を調べてみて最も目立ったのは、達成者がいるチームの2ケタ得点の多さ。全76試合中46試合で、達成者のチームが2ケタ得点をたたき出しています。先述した牧秀悟選手が達成した試合も、DeNAが10得点をたたき出して大勝していました。

 そもそもサイクル達成者が出たチームはその試合で高得点を出す傾向が高く、その平均は9.67点。5得点未満だった試合は8試合しかありません。サイクル安打は突出して調子のよい選手が達成するというよりも、チームとして相手投手を打ち崩した結果に付いてくるものという見方ができそうです。

ちなみに

 1999年6月30日、R.ローズ選手(横浜)が達成した試合で横浜は、広島を相手に20得点をたたき出す暴れっぷり。3番・鈴木尚典選手は4安打3打点、4番・ローズ選手は4安打5打点、5番・駒田徳広選手は4安打1打点とクリーンナップの3人で12安打9打点をたたき出しています。ちなみにこの時の広島の先発は現・監督の佐々岡真司選手。4.2回を投げ、16被安打12自責点と完膚なきまでに打ち込まれてしまいました。一方で現・横浜監督の三浦大輔選手もこの試合、偵察要員として7番・ライトに名前を連ねています(佐伯貴弘選手と交代)。

3.サイクル安打が生まれやすい球場はあるのか

 それでは、サイクル安打が生まれやすい球場はあるのでしょうか。調べてみると、後楽園球場甲子園球場がともに6試合でトップ。次いで神宮球場川崎球場平和台球場が5試合、ナゴヤドーム横浜スタジアム大阪スタヂアムが4試合となっています。ちなみに甲子園球場は、ラッキーゾーンが設けられた1947~1991年に3回、撤去後に3回という内訳です。

 各チームが本拠地としている球場が多いのは試合数から言っても当然ではありますが、かといって地方球場でサイクル安打が達成されていないとは限りません。
 1976年7月7日の広島-巨人戦では衣笠祥雄選手(広島)札幌円山球場で、2018年7月9日のヤクルト-巨人戦には山田哲人選手(ヤクルト)静岡草薙球場で達成するなどといった例があります。
 珍しいケースでは、2003年7月1日のヤクルト-横浜戦では稲葉篤紀選手(ヤクルト)松本市野球場で達成していますが、試合そのものは降雨のため6回裏終了でコールドゲームに。この日は大阪ドーム村松有人選手(ダイエー近鉄を相手にサイクル安打を達成しており、史上初となる同日・2選手の記録達成となりました。

4.複数回達成者はあの名選手

 NPBにおけるサイクル安打の最多達成選手はR.ローズ選手で、その数は3回。1995年、1997年、1999年と2年おきに達成しています。“史上最強の助っ人選手”として今でも度々名前も上がる名選手です。

 2回達成したのは、松永浩美選手(阪急、オリックス藤村富美男選手(阪神福留孝介選手(中日、阪神の3人。福留選手は唯一、複数球団での達成。“ミスター・タイガース”こと藤村選手は1リーグ時代の1948年にNPB初の記録達成、そして2リーグ制初年度の1950年に自身2度目の記録を達成しています。

5.最多輩出チームはどこだ

 最多選手の存在があるなら、最多輩出チームもきっとあるはず。ということで、チーム別の輩出回数を数えてみました。集計結果は以下の通り。

DeNA:10回(DeNA:2回 横浜:4回 大洋:3回 洋松:1回)
中日:8回(中日:7回 名古屋:1回)
オリックス:7回(オリックス:2回 阪急:5回)
ヤクルト:7回(ヤクルト:6回 国鉄:1回)
阪神:7回
西武:7回(西武:4回 西鉄:3回)
広島:6回
ロッテ:5回(ロッテ:4回 毎日:1回)
巨人:5回
日本ハム:5回(日本ハム:2回 東映:2回 東急:1回)
近鉄:4回
ソフトバンク:4回(ソフトバンク:1回 ダイエー:2回 南海:1回)
大映:1回
 前身球団を含めて最多はDeNAの10回、次いで中日の8回、オリックス・ヤクルト・阪神・西武の7回がトップ3に。巨人はセ・リーグでワーストの5回、パ・リーグでは楽天がまだ達成者無しとなっています。大映は1946年~1957年にかつて参戦していた球団で、1958年シーズン開幕前に毎日(現・ロッテ)と合併しました。

6.達成者はチームの中心選手に? 日本人選手に見る傾向

 歴代の記録達成者を振り返ってみると、とりわけ日本人選手においてはチームの中心選手、もしくは中心選手へと成長していった選手がほとんどという傾向が見られます。

 近年では今年のオリンピックで代表選手としても活躍した梅野隆太郎選手(阪神が2019年に、2017年にWBCを戦った平田良介選手(中日)はその翌年に記録達成。2016年からレギュラー入りした桑原将志選手(DeNAも2018年に記録達成しており、今季は9月18日現在でリーグ3位に入る活躍を見せています。同じく2018年に達成した山田哲人(ヤクルト)・柳田悠岐ソフトバンクの両選手は言わずもがな、さらにさかのぼっても福留孝介選手・大島洋平選手・小笠原道大選手といったビッグネームが名を連ねました。

 一方で今季達成した塩見泰隆選手は今季売り出し中の若手選手、牧秀悟選手に至ってはルーキーで、中心選手と呼ぶにはまだ実績不足。しかし、サイクル安打がチームの中心選手へ成長するジンクスであると捉えれば、今後のさらなる飛躍に一層の期待がかかります。

7.12球団最後のサイクル安打達成者は

 最後に、某プロ野球系スレッドやスポーツ系Web媒体などで度々あがる「12球団最後の○○達成者」という記事に倣い、各チーム最後のサイクル安打達成者を列記していきます。

セ・リーグ
ヤクルト:塩見泰隆(2021年)
DeNA:牧秀悟(2021年)
阪神:梅野隆太郎(2019年)
中日:平田良介(2018年)
広島:R.ロサリオ(2014年)
巨人:小笠原道大(2008年)
パ・リーグ
ソフトバンク柳田悠岐(2018年)
ロッテ:J.ズレータ(2007年)
西武:細川亨(2004年)
オリックス:J.オーティズ(2003年)
日本ハム田村藤夫(1989年)
楽天:なし
近鉄中村紀洋(1994年)

 ここ数年はセ・リーグの選手の記録達成が目立っており、パ・リーグではソフトバンク以外のチームが軒並み10年以上輩出なしという現状に。楽天はチーム創立以来まだ達成者が出ていない一方、2007年にはJ.ズレータ選手の記録達成を本拠地のフルスタ宮城で許しています。また、セ・リーグでは巨人の約13年輩出無しが最長でした。

ちなみに

 では、上記の条件に「チーム本拠地での達成」という条件をプラスしてみるとどうなるでしょうか。現在の本拠地で、という条件で調べてみました。

阪神:梅野隆太郎(2019年、甲子園)
中日:平田良介(2018年、ナゴヤドーム
DeNA桑原将志(2018年、横浜)
西武:松井稼頭央(2000年、西武ドーム
巨人:広沢克(1997年、東京ドーム)
ヤクルト:J.ハウエル(1992年、神宮)
 意外にも広島は、マツダでの記録達成者なし。マツダでの達成者自体も大島洋平選手のみとなっています。
 パ・リーグでは日本ハムオリックスソフトバンク、ロッテが現本拠地での達成者無しですが、中でもロッテはZOZOマリンスタジアム自体が設立以来サイクル安打達成者無しという難攻不落状態に。1990年の開場から31年、初の達成者は現れるのでしょうか。

8.まとめ資料

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 今回の記事制作にあたり、日本野球機構 と  日本プロ野球記録 を参考資料としました。