こんにちは、20世紀のアニソンを愛でる会、会員番号001のだう。です。
文字通り、20世紀のアニソンを愛でて愛でて愛でまくる連載にしていきたいと思います。
以後、お見知り置きを。
記念すべき1回目は1972年の名作『デビルマン』より、「今日もどこかでデビルマン」!
1.今日もどこかでデビルマン、とは。
楽曲はアニメ『デビルマン』のエンディング曲として使用。
作詞は説明不要の名作詞家、阿久悠氏。
作曲はその阿久氏とのタッグでピンク・レディーのヒット曲を多数生み出した都倉俊一氏。
編曲は「大空と大地の中で(松山千春)」「砂の十字架(やしきたかじん)」などの編曲者としても知られる青木望氏。
そして歌はCMソングを多数手がけた十田敬三氏、という布陣。
オープニング曲「デビルマンのうた」の陰に隠れがちですが認知度は高く、『とんねるずのみなさんのおかげです』でのパロディコント「デビルタカマン」では“今日もどこかで小野みゆき〜♪”という替え歌が使われていました。
また、POLYSICSのハヤシヒロユキがDJとしてイベント出演した際にかける楽曲の一つとして(ごく一部の間で)有名で、大サイズの脚立を使ってエンディング映像の再現をするというパフォーマンスは(ごくごく一部の間で)伝説となっています。
2.誰も知らない、知られちゃいけない魅力
この曲の一番すごいところ、それは“歌詞の大部分で敢えてメッセージ性を捨てた”ことではないでしょうか。
以前、『アメトーーク!』で博多大吉氏が「昔のアニソンは曲を聴いただけでそのアニメの内容がだいたい分かる」という小ネタを話していました。
主人公の特徴やら必殺技、仲間達や敵のことまで、大まかな内容が歌詞になっているので、曲を聴けばアニメの大筋が見えるというわけです。
まあ、この話はオープニング曲にこそ通じる話ですが……。
そんな話を踏まえてこの「今日もどこかでデビルマン」。
だいたいの歌詞はデビルマンのことは言えないし話せないなんてことを言っています。
まあ確かに、普段は人間の姿をして身を隠しているデビルマンですから、誰なのかなんて言えるわけがないし、ふるさとだって話せるわけがありません。だってパパラッチ来たら大変じゃないですか。
ですが、素性を明らかにできないことを、歌詞の半分以上を割いて語ることで、後半の歌詞が活きるのです。
人の世に愛がある
人の世に夢がある
この美しいものを守りたいだけ…
人間の愛、そして夢に魅せられたデビルマンの想い。それをこの3行に凝縮しているのです。
やられた。
これぞまさにプロの技術。
さすが阿久悠氏。
唸らずにはいられません。
3.エンディング曲は気張らない
この曲の良いところとしてもう一つ挙げておきたいのが、オープニングとは対照的な印象の曲調。
いわゆるヒーローもののアニメといえばオープニング曲はブラスが入ったりオーケストラが入ったりとゴージャスなアレンジで力強さを表したものが多かったりするのですが、それに比べるとエンディング曲は程よく力が抜けた曲調だったり、どこか哀愁が漂う感じがあったりとオープニングとは対照的な作りが印象的です。
デビルマンにしても、オープニングの「デビルマンのうた」は壮大なイントロからブラスやストリングスを駆使した重厚なアレンジが光る一曲ですが、対する「今日もどこかでデビルマン」は管楽器やブラスも使われていますがどちらかというとアコースティックを軸にしたアレンジが特徴的。
それだけに、歌詞にも表れているデビルマンの孤独を引き立てるもの寂しさを感じることもできます。
全体的には熱くなりすぎず、しかし抑揚がじわりと効いた十田敬三氏の歌唱も忘れてはならないポイント。「デビルマンのうた」ではボーカル・ショップのコーラスが加わって力強さが増していますが、「今日もどこかでデビルマン」は十田氏の独唱で一貫しているというのも絶妙なチョイスです。
4.鉄塔をください
「今日もどこかでデビルマン」の魅力にハマるとやっぱりカラオケで歌いたくなりますよね。
カラオケで歌う際には序盤とサビとの微妙なメリハリと本家ならではの伸びやかな歌いっぷりに気を付けて……と言いたいところですが、何か足りません。
何が足りないんだろう。
そこで『デビルマン』のED映像を観てみます。
夕陽に照らされる街並。
そこから右へ大きくパンして、鉄塔に座り腕組みして街を見下ろすデビルマン……。
これだ。
この孤独感。哀愁。
ただソファに腰かけて歌うだけでは生まれない孤独感。
ただスタンディングで熱唱しても醸し出されない哀愁。
これがなければ「今日もどこかでデビルマン」は完成しません。
では、どうすればいいのでしょう。
カラオケルーム内に鉄塔を作れればベスト。
そこによじ登り、ルーム内を見下ろしながら歌うのです。
まあ、無理です。
そんなの無理でしょう。
しかしこのブログを読んで歌ってみたいと思った方は、自分なりに孤独感を引き出すシチュエーションを作って歌に臨んでいただければと思います。
脚立を持ち込み鉄塔シチュエーションを再現したハヤシは天才なのかもしれません。